「どこかに行こうよ」
 誘ったのは河合ちゃんのほうだった。
「いいよ」
 よく考えずに返事をしたけれど、まさか旅行だなんて、思わなかった。
 だって買い物に行くのだって、ゲーセンにいくのだって、『どこか』でしょ?
 オレとしてはその程度のつもりだったのに。
 河合ちゃんが持ってきたのは旅行のパンフレットだった。
「どこに行く?」
 聞かれるけれど、そんなの急に言われても思い浮かばない。
「えっ・・・・・・、あっ・・・・・・、う~ん」
 悩んでいると、わくわくって目で河合ちゃんはオレの返事を待っていた。
「温泉?」
 ちょっと時期はズレている気はするけど。でも、北の方とかだったらいいんじゃない?
「いいね。じゃあ温泉にしようか」
 河合ちゃんはノリノリで温泉旅館が載ったパンフを広げ始める。
 それから2人であーでもない、こーでもないと話し合って。
 なんかそれが妙に楽しくて。
 まあ、こういう休みもアリかと思った。
 本当の連休はコンサートで毎年それどころじゃないけれど。
 一泊二日でかまわないから、今年は2人でとせこかへ行こう。